2009.10.26

【金子ブログ】vs 流通経済大学

かつて国見高を全国区の強豪へと育て上げ、現在はVファーレン長崎で評議員をなさっている小嶺忠敏先生が、もしFC琉球のスタッフであらせられたら。

 永井秀樹、明日にも剃髪でしょ。

右サイドを突破した比嘉からの絶妙のクロス。低くて、早くて、正確なクロス。普段、永井自身が「いいか、クロスっていうのはこうじゃなきゃいかんのだぞ」と説いているのと同じクロス。これがファーサイドに走り込んだ永井にピタリと合う。ニアサイドに張りついていたGKはファーまでケアできず、DFも置き去り。ゴール、がら空き。嗚呼、あれは3年前、ニュルンベルクでの悲劇、そう、柳沢敦の悲劇でさえ、この日永井秀樹が迎えた場面に比べれば難易度が高かったかもしれない。それぐらいイージーな、ええい、小学生だって決められる場面で……

頼むよ、おじいちゃん!

 かつて静岡学園を全国区の強豪へと育て上げ、現在は何をなさっているか寡聞にして存じあげない井田先生が、もしFC琉球のスタッフであらせられたら。

 中村友亮、明日にも五厘刈りでしょ。

 左サイドを突破した林田がこれまた絶品のクロス。せっかくサイドを突破しても、アバウトなクロスですべてを台無しにすることの多かった男が、やって見せてくれた足に魂を込めた丁寧なグラウンダーのクロス。走り込んだのは中村。素晴らしいタイミング。飛び出すGK……

 お願いしますよ、おちびちゃん。

 まあね、いったい何度、頼んだりお願いしたりを繰り返したことか。周囲のお客さんから「なんやの、この危ないヒトは」みたいな視線を浴びながら、スタンドでのけぞりまくってしまいましたがな。おまけに、ただチャンスを外しただけでなく、ピンチの数もハンパなくたくさんあったもんだから、試合が終わった瞬間、完全グロッキーですわ。

 でも、面白い試合だった。いま世界で一番面白いっていわれてるリーガ・エスパニョーラにだって、こんなにもスリル満点なスコアレス・ドローはちょっとないと思えるぐらい、面白い試合だった。琉球の攻めは抜群だったし、流通経済大学の攻めも抜群だった。もう一ついうと、琉球の守りも抜群だったし、流通経済大学の守りも抜群だった。攻めが、守りが、ほんの紙一重上を行く。ゆえにチャンスが生まれ、ゆえにピンチが防がれる。そんな応酬だった。

 こういう試合をね、ホームでやってくれよ。そしたら、あんなにもお客さんが減ることなんて絶対にない。見に来てくれたお客さんの9割は、琉球フットボールの中毒患者になる。「映像がないのをいいことに、カネコタツヒトはホラを吹いてるんではなかろうか」といった疑惑がかけられることもなくなる。

 試合後、新里監督は厳しい表情だった。

「みんなにカツいれてやりますよ。こういう試合を勝たないでいつ勝つんだって」

 いいね、いい話だね。こっちはひどすぎた先週の試合と比較してしまうものだから、つい笑顔。でも、滋賀で佐川に勝ったことを考えれば、確かに勝たなきゃいけない試合だった。どちらもダウン寸前にまで追い込まれあった試合だったけれど、GKのファインセーブは圧倒的に相手の方が多かったんだから。

 剃髪間違いなしの大失敗をやらかしてしまった永井にしても、出来自体は抜群だった。特に、もはや決して速くないはずの全力ダッシュを異様なほどに速く見せる術は、すべての琉球の選手が盗んでほしい。あのダッシュを効果的に散りばめているから、こちらとしても鬼になれない。中村についてもしかり。ペース配分度外視でボールを追いかけ回す様は、関東のファンのどよめきを誘っていた。

 林田。やっと最後のプレーの大切さをわかってくれたのか。秦。献身的な動き。大沢とミンチョル。相変わらず抜群。比嘉。久しぶりにキレのあるプレーを見せてくれた。

 先週、あれだけひどい試合をやったというのに、今回、出来の悪かった選手はゼロ。厳しい言い方をすれば、右サイドに起用された大河原のクロスの精度に不満は残るけれど、前半20分、完全に最終ラインが崩された決定機を救ったのは、彼の捨て身のダイブだった。本来のポジションではないところで、よく頑張ったと言える。

 だから問題は、なぜこういう試合がホームでできないのかということ。

 真面目な話、カネコタツヒトにはわからない。どうやら、選手たちもわかっていない様子。ならば、この際だから選手同士に懇親会的なミーティングをやって、「なぜホームでいいサッカーができないか」を大まじめに話し合うのも悪くない。

 もちろん、懇親会にはお金がかかる。でも、選手諸君、ご安心ください。ミーティングにかかる代金は、小嶺先生が琉球のスタッフであったならば剃髪処分間違いなしの大ベテランが負担してくださるそうです。


2009.10.18

【金子ブログ】vs ガイナーレ鳥取

これはもう、期待をしないでくれってことなのか?

 2週間前、琉球は素晴らしい試合をした。首位のチームを相手に、内容で完全に凌駕する試合をやった。普通だったら、期待する。これで次の試合もいけるんじゃないか、と考える。

それが間違いってことなのか?

気迫も根性も執念もないやつらに期待する方が間違ってるんだって、醒めた目で眺めてろってことなのか?


つまり、FC琉球ってのはプロじゃない、単なるサッカー愛好者の集まりだと考えろってことなのか?


 正直、1点をリードした直後の守りには疑問符がつきまくってる。風下であるにもかかわらず先制点を奪った。考えるべきは、2点目を奪うことではなく、1点をとられないこと。1-0のまま後半に入れば相手は相当に厳しくなる。勝手にバランスを崩してくれる。なのに、ペナルティエリアにフリーの選手を作ってしまう感覚が、まったくもって理解できない。逆転ゴールとなったFKに対する守りもお粗末そのもの。


 ただ、サッカーというスポーツがミスを前提になりたっている以上、理解しがたくとも仕方がないことだと割り切ることはできる。どんなに一流の選手だってミスはするし、サッカーからミスが消えたら、すべての試合は0-0で終わるってことになってしまうから。

 許しがたいのは後半の戦いぶり。


 この日、バックスタンドにはサポーターが作った「一心同体」という横断幕がかけられていた。残念ながら、琉球の選手たちは「一心一体」だった。一人の体に一つの心。つまり、11人がバラバラ。どうやって攻めたいのか、いや、そもそも攻めたいのか守りたいのかさえもわからなかった。


 何しろ、負けているホームチームだったにも関わらず、後半に琉球が放ったシュートはたったの1本だったんだから。

 もちろん、シュートは打てばいいってものじゃない。個人的には「最後はシュートで終われ」って言葉ぐらい、ナンセンスなものはないとも思っている。目的はシュートじゃなくてゴールだろって思うから。でも、チーム全体からシュートを打とうという意識がまるで感じられなかったとなると、さすがに容認するわけにはいかない。負けてるチームが繰り返すバックパス。俺がディエゴ・アルマンド・マラドーナだったら放送禁止用語を連発してるところ。


「いや、俺は頑張った」──もしかしたら、心の中でそう思ってる選手がいるかもしれない。うん、頑張ったことを否定しようとは思わない。でも、プロっていうのは、頑張りをファンに伝わる形で見せなきゃいけない。自分としてはどれだけ頑張ったつもりであろうとも、ファンに伝わってなければ意味がない。


 俺はファンに伝えることができた。そう胸を張れる選手はいるか?

 選手よりはいささか人生経験を積んできた人間として、一つアドバイスしておこう。負けているサッカー選手がファンに必死さを伝える手段の一つに、全力疾走がある。80パーセントのエネルギーでのランニングに、5回に1回、あるいは10回に1回、全力疾走のプレーを織りまぜる。自分がボールを持っていない時に、全力のダッシュを散りばめる。小ずるいやり方ではあるけれど、それだけでずいぶんと頑張ったような印象をファンに与えることはできる。


 この日、中盤でそれをやってたのは永井秀樹だけだった。チーム一のおじいちゃんが全力で前線に駆け上がっていくのに、それを追い越していく選手は皆無だった。


 すべてのプレーを全力で、といってるわけじゃない。それはマラソンを1時間55分で走れというようなもの。できそうで、でも絶対にそんなことはできない。やってほしいのは、感情の昂りを、逆転された悔しさを、時々でいいからプレーの中に織りまぜてほしいってこと。ようは、メリハリ。


 実をいえば、フリーランニングでのメリハリのなさは、琉球の試合を見ていてずっと気になっていたところでもある。あ、ここで誰かが全力で前線まで駆け上がってくれればチャンスになるのに……という場面が、たいていはペースダウンして終わってしまう。杉山の個人的な速さがないとスピーディーな攻めができないっていうのは、いまのチームが抱える深刻な問題の一つ。

 0-0、あるいは1-0の状況であれば、そんなリスクを背負いたくないという感覚もわかる。でも、この日の琉球は逆転されていた。追いつくためには、リスクを背負わなければいけない状況だった。


 なのに、展開されたのは自分たちがリードしているようなサッカーだった。


 膝の力が抜けちまいますだよ。

 琉球にはJFLでも屈指の才能が揃ってるのは事実。だから期待もするし、腹もたつ。でも、ファンに気持ちを伝えられない選手は、どれだけ才能があってもプロじゃない。


 JFLの16位に低迷するチームで「プロじゃない」って烙印を押されてしまったら、どこかいくところはあるんかいな。


2009.10.05

【金子ブログ】vs SAGAWA SHIGA

 一瞬先は闇。明日のことはどうなるかわからない。いまが天国でも、次の瞬間に地獄に落ちていることもあり得る。

 その逆もある。地獄の底でのたうっていたのに、気がつけば天国にいた。天皇杯の県予選で惨敗し、町田には総合力の違いを見せつけられた。TDKとのクラスマッチにも負けた。明るい材料なんか、どこにもなかった。

 なのに、秋というにはいささか強すぎる日差しが照りつける滋賀で琉球を待っていたのは、光だった。眩いばかりの光だった。

チームにとっては、歴史的な勝利だったと言っていい。

 なにが歴史的だったのか。チーム史上初めて、リーグ首位を走るチームを、内容で完全に凌駕したうえで倒した試合だったからだ。こんな琉球は、いままでなかった。

 どん底に陥っていたチームにまず光をもたらしたのは、永井の奮闘だった。開始早々、ゴール前でのワンツーから抜け出してGKと1対1に。これは惜しくも相手GKの好守に阻まれたものの、早い時間に決定機をつかんだことで、自信喪失気味だったチームはずいぶんと前向きになった。

 そして13分。中盤左サイドから持ち上がった永井がニアサイドに突っ込んできた比嘉とのワンツーを試みる。

「俺としては、雄作に止まってもらって、そこでワンツーをしたかったんだけどね」

 ところが、比嘉は永井との思惑とは違う動きを見せた。そのままトップスピードでニアに駆け抜けてしまったのだ。比嘉がストップすることを前提に出されたパスは、スペースを横切る形でファーサイドに。

 でも、そこには山下がいた。DFを引き連れる形で、突っ込んできていた。懸命に足を出すDFとグシャリとつぶれるような形で放たれたシュートは、しかし、鈍くGKの脇を破った。

 これで琉球は完全に波に乗った。選手たちは、ビロードのように美しい芝生の感触を楽しむかのようにボールを滑らせる。相手は首位を独走するチーム。こちらは地域リーグ降格の危機にさらされるチーム。ただ、この日のピッチ上の出来を見る限り、立場は完全に逆転していた。中盤を完全に支配した琉球と、耐えるしかないSAGAWA。39分には、またしても流れるようなパスワークから、最後は國仲がグラウンダーのミドルをきれいに左サイドネットに突き刺して2点目を奪う。ハーフタイムの訪れを待たずして、勝負は決したかと思われた。

 というか、決しておかなければいけない試合だった。

 前半終了直前、この日の琉球が抱えていた唯一にして最大の問題が顔を出す。両サイドのディフェンスの甘さ。攻めていたわけでもないのにカウンターに近い形で右サイドを崩され、クロスを頭で押し込まれた。内容で圧倒しながら、スコアは1点差で前半は終了。

 後半に入ると流れは一変。ガラリとやり方を変えてきたSAGAWAに琉球は守勢一方に追いやられる。この日、大沢と孫の出来は抜群だった。前半、この2人が1対1でやられた場面はゼロに近かった。すると、後半のSAGAWAは、この2人を相手に勝負することを避け、早い段階からミドルレンジでのシュートを放つ策に切り換えてきたのだ。

 これに琉球は戸惑った。本来であれば中盤の選手がもう少しチャレンジするエリアをあげなければならなかったのだが、前半と同じやり方で守ろうとしたため、最終ラインの手前から雨あられとシュートを許してしまう。

 もちろん、派手には見えるものの、ミドルレンジからのシュートはそうそう決まるものでもない。戸惑いの消えた後半のなかばあたりになると、危険なエリアは秦がきっちりとカバーするようになり、流れは再び琉球の方へと傾きつつあった。

 ところが、ここで再び両サイドの甘さが顔を出す。65分、右サイドを突破されて大きく反対サイドに展開されると、そこにはドフリーのSAGAWAの選手。ここでダイレクトに中央に折り返されると、なんと、走り込んだ國仲が勢いよくボールを押し込んでしまう。

「まじやばかったっす。どうしようかと思いました」

 ええ、こちらもピッチにおりていって首を締めてやろうかと思いましたよ、國仲さん。

 ただ、ここで生きたのが先週の教訓だった。2点差を追いつくには相当なエネルギーがいる。2点差を追いつけば相当な達成感も生まれる。そのことを、選手たちは知っていた。テレビの麻雀大会出演のために先週の試合に行けなかったカネコタツヒトは知らなかったが、琉球の選手たちは痛いほどに知っていた。

 事実、追いついた時点で、SAGAWAの勢いはぱったりと止まった。

 先週の試合がなければ、琉球の選手たちも追いつかれたショックが先に立ち、反攻に転じる気力を失っていたかもしれない。勢いを失った相手に合わせ、勝ち点1を守るほうに意識が向いていたかもしれない。

 だから、この日の琉球は、痛すぎる敗北の教訓を、見事に活かしたことになる。

 終了直前、FKの混戦から相手がペナルティエリア内でハンド。これで得たPKを、松田がきれいに左隅に流し込んだ。

 失いかけていた勝ち点2を再び取り戻したことで、シーズン通算の勝ち点は31となった。これは、過去のJFLで琉球が獲得した勝ち点を超えるチーム・レコードでもある。首位のチームを内容で凌駕した。6連敗という悪夢のようなスタートを切りながら、あと6試合を残した段階で早くも昨シーズンの勝ち点を超えた。

 今節のJFLでは、最下位の三菱水島が北九州を食った。刈谷もMIOを倒した。一瞬先は闇。何がおこるかわからないのがこのリーグの特徴でもある。

 次節も光が待っている、とは限らない。ただ、少々のことでは薄れることのない強烈な自信を、この日の試合から選手たちはつかんだはず。


 大げさではなく、歴史的な勝利だった。